店の情報を直した数週間後に、試しにAIへ自分の店のことを聞いてみる。返ってきた答えに、移転前の住所が混ざっている。あるいは去年やめたはずのコースが、まだ扱っているかのように説明されている。Googleビジネスプロフィールもサイトも直したのに、です。こういう相談が最近になって増えました。ここで起きているのは「AIが間違えた」ではなく、AIが見ている場所と、こちらが直した場所が同じではないという事態です。この記事では、古い情報がなぜ残り続けるのかを、参照のされ方から見ていきます。
「AIが覚えている」という言い方が事態を取り違えさせる
最初に、言葉の整理から入ります。生成AIが店の情報を答えるとき、経路はひとつではありません。学習の段階で取り込まれた内容から答えている場合と、質問を受けてからその場でウェブを検索し、見つけた文書を読んで答えている場合があります。多くのサービスは、この両方を状況に応じて使い分けています。
この違いが、古い情報の残り方を分けます。その場で検索して答えているなら、参照された文書が新しくなれば答えも変わります。学習時点の内容から答えているなら、自社の情報を直した効果が答えに表れるまでに時間差があり、効く場所も変わります。同じ「AIが古いことを言っている」という症状でも、裏側で起きていることが逆を向いているわけです。
そして厄介なのは、一度の答えを見ただけではどちらか分からないことです。返ってきた文章は、どちらの経路でも同じような顔をしています。「参照元」として出典が添えられていても、それが答えの全部を支えているとは限りません。
「AIが覚えている」という言い方は、この区別を潰してしまいます。覚えているのだとすれば忘れさせればよい、という発想になりますが、実際にはそういう操作の窓口があるわけではありません。自店について返ってくる答えがどちらの経路寄りなのかは、一度の答えの文面だけからは判別できません。
参照先は一箇所ではないので、直した順に消えていかない
その場で検索して答える経路のほうも、単純ではありません。店の情報は、自社が管理している場所だけに載っているわけではないからです。
自社サイトやGoogleビジネスプロフィールに加え、予約サイトや地域の情報サイトなど、店名で検索したときに出てくる文書の数だけ、情報の写しが散らばっています。自社が直せるのはこのうちの一部で、残りは他社が管理している文書です。
自社の情報を直すことは、写しの一枚を直すことにあたります。他の写しは、それぞれの運営者の都合で更新されます。更新されないまま数年放置されている文書も珍しくありません。AI側から見ると、新しい記述と古い記述が同時に存在している状態になります。どちらを採るかは、自社の情報を直しただけでは決まりません。
さらに、写しどうしが引用し合っていることがあります。あるまとめ記事が古いポータルの記述を引き、別のサイトがそのまとめ記事を引く。元の情報源が直っても、引いた側は直りません。間違いが一箇所にあるのではなく、枝分かれして増えているという形です。この枝ぶりは、自社の管理画面のどこにも表示されません。
自店について返ってくる答えが、どの文書に引きずられているのかは、外から並べて見ないと決まりません。外から見たときに自店の情報がどう扱われているかは、ずれが自社側にあるのか、その外にあるのかを分ける材料になります。ただ、どの文書に引きずられているのかは、今の並びから当たりはつきますが、確定には変化を重ねて見る必要があり、その変化は店の管理画面に残らないため、見る側に任せるほうが早い部分です。リンク先の診断は、その入口で当たりをつけるものにあたります。
日付の新しいほうが採られるとは限らない
ここが、多くの店にとって意外な部分です。
新しい情報と古い情報が両方あるとき、AI側は必ずしも日付の新しいほうを採りません。日付以外の性質が効いてくるため、古いほうが残るという逆転が起こり得ます。
しかも、店の情報は複数の文書に写されているので、訂正したつもりが、訂正した一枚のほうが少数派になっていることもあります。何がどう効いて古いほうが採られているのかは店ごとに違い、外から並べて見ないと分かりません。その材料は店の中に無いので、見る側に任せるのが確実な部分です。
放置したときに失われるものは、単発の誤案内では済みません。古い情報が参照され続けるあいだ、それを読んだ人が書く新しい文書にも、古い内容がそのまま引き継がれます。時間が経つほど写しが増え、直す対象が増えていきます。旧住所を頼りに来店できなかった人や、やめたコースを見て予約を取りやめた人は、そのまま姿を消します。しかも、その増殖は自社の数字には何も現れません。問い合わせが来なかった人のことは記録に残らないからです。気づくのは、たいてい何ヶ月も後に「そちら、まだ移転前の場所ですよね」と言われたときです。
踏むと取り返しがつきにくい線がある
古い情報が残っていると分かったとき、焦って手を出したくなる場所がいくつかあります。そのうちいくつかは、踏んだ時点で状況が元に戻りません。重いものだけ挙げておきます。
- Googleビジネスプロフィールを、移転や改名のたびに新規で作り直すこと:重複した登録はポリシー違反にあたり、プロフィールの停止につながります。停止されれば、それまで積み上げた口コミごと表から消えます
- 他社が運営するサイトの記述を、無断で書き換える/書き換えさせようと圧力をかけること:法的な問題になり得ます
このほかにも、どこまでが訂正でどこからが行き過ぎなのかを分ける線は複数あります。どの線に当たるかは、扱っている情報の種類と業種ごとの規制によって変わり、一律では決まりません。誤情報を消すつもりの行為が、別のルールに触れて自店の表示そのものを失わせる、という順序で起きることがあります。どの線に当たるかの見極めは、店の中の情報だけでは決まりません。扱う情報と業種の規制を、外から見て判断できる側に出してもらうほうが、取り返しのつかない手を避けられます。
なぜ残っていることに自分で気づけないのか
ここまでの話をまとめると、古い情報が残る理由は、こちらの不注意ではありません。参照される文書が散らばっていて、そのうち自社が触れるのは一部だから、という構造の問題です。
そして、残っていることに気づく仕組みが、店の側にありません。AIに何を聞かれているかは、こちらには届きません。答えを受け取った人が、それをどう扱ったかも分かりません。自分で試しに聞いてみることはできますが、店の側で一度聞いた答えは確定の材料にならず、見当をつけたうえで変化を重ねて確かめていくことになります。その積み重ねは店の側には残りません。
この判定に要る材料は、店の側に記録が残らないところにあります。
店の中にあるのは、自社の管理画面と受注記録です。そこに残るのは自店の数字だけで、文書の散らばりも、時点ごとの変化の記録も、最初から店の側にはありません。担当者の手が足りないという話ではなく、記録の取りようが最初から無いという違いです。だから社内で何度会議をしても、材料が増えないまま同じ推測を繰り返すことになります。
※自店の情報が生成AI側でどう扱われているかを整理し、どこから手を入れるかを設計する部分は、当社FACTORが引き受けている領域です。この判断をするとき見ているのは自社の管理画面だけではありません。店名で出てくる文書の散らばりと、AIの回答に出る記述がどの写しと重なるかを、時点ごとに重ねて見て逆算しています。この積み重ねは店の管理画面には残らないため、社内では組み立てにくい部分です。
古い情報が気になっているなら、どこを直すかを決める前に、直す対象が自社の中にあるのか外にあるのかを分ける必要があります。その見極めは店の中の画面では再現できず、外から並べて出す工程が先に要ります。
よくある質問
生成AIに載っている自店の古い情報は、運営会社に削除を依頼できますか?
自社サイトを直せば、AIの回答もすぐ新しくなりますか?
移転や改名のとき、AI向けに何か特別な対応が要りますか?
まとめ
AIが古いことを言っているとき、裏側で起きていることは一種類ではありません。学習の段階で取り込まれた内容から答えている場合と、その場で検索した文書を読んで答えている場合があり、打ち手は逆を向きます。そして残っていることに気づく仕組みが店の側にありません。店の側で一度聞いた答えは確定の材料にならず、変化を重ねて確かめる必要があり、その積み重ねが店の側に残らないからです。直す対象が自社の中にあるのか外にあるのかで手の入れ方が変わります。外から見たときの出方は店の中からは再現できないため、それを持っている側に出してもらうほうが早いのが実情です。
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