店舗DX・AI活用

店舗のAI電話対応は必要か|
導入判断で分かれる3つの論点

公開日: 2026.08.29執筆: FACTOR編集部

先週、自店にかかってきて取れなかった電話が何件あったか、答えられるでしょうか。多くの店舗は、この数字を持っていません。鳴っているのは知っているが、何件で、どの時間帯で、誰が何を聞こうとしていたかは残っていない。AI電話対応の導入を検討する場面で最初に問題になるのは、機能でも料金でもなく、この空白です。取れていない電話の中身が分からないまま入れると、何が改善したのかも分からないまま契約が続きます。この記事では、導入の可否で意見が割れる論点を、店舗運用の現場目線で整理します。

取れていない電話は、何を取りこぼしているのか

店舗にかかってくる電話は、内容が均一ではありません。予約、営業時間の確認、在庫や空きの問い合わせ、道案内、クレーム、そして営業電話。混ざっています。

ここで見落とされがちなのは、取れなかった電話のうち、かけ直しても意味がないものが相当数あるという点です。今そこで決めようとしている人からの電話は、出なければ次の店にかかります。一方で、後からの折り返しでも間に合う内容もある。両者は同じ「不在着信1件」として記録され、区別されないまま流れていきます。

この区別がないと、AI電話対応を入れる判断も、入れたあとの評価もできません。取りこぼしの中身が分からないまま「電話が取れるようになった」だけを見ても、売上との関係が説明できないからです。

POINT

判断の出発点は「何件取れていないか」ではなく「取れなかった電話が、どういう状態の人からのものだったか」です。件数だけでは、入れるべきかどうかは決まりません。

AIが電話に出るとき、実際に何をしているのか

言葉の印象が先行しやすい領域なので、動作を分解しておきます。店舗向けのAI電話対応と呼ばれるものは、おおむね次の流れで動いています。かかってきた音声を文字に起こし、その内容を判定して、あらかじめ用意された応答の中から返す。予約や伝言に当たるものは記録として残し、担当者に通知する。

つまり、AIが自由に会話しているというより、想定された範囲の内容を、想定された形で処理していると捉えたほうが実態に近い。ここが重要で、想定の外に出た瞬間の挙動が、その店舗にとって許容できるかどうかが判断の分かれ目になります。

近年は音声の認識精度も応答の自然さも上がっており、名乗りと簡単な用件のやり取り程度なら違和感が出にくくなったとされています。ただし、方言や店舗特有の商品名、騒がしい環境からの通話といった条件で結果が変わる点は、今も残っています。

効く店と効かない店を分けているもの

導入の可否で意見が割れる論点は、実務上おおむね三つに集約されます。

ひとつめは、その店にかかってくる電話が、定型に落ちるかどうかです。用件が数種類に収まり、答えが決まっている業種では処理できる範囲が広い。逆に、一本ごとに条件が違い、その場で判断が要る業種では、AIが処理できる部分が薄くなります。

ふたつめは、取り逃がした一本の重さです。客単価が高く、検討期間が長く、一度離れたら戻ってこない業種では、一本の取りこぼしが大きい。反対に、来店の敷居が低く、電話がつながらなければ直接来店される業種では、同じ一本の重みが違います。

みっつめは、AIが出たと分かったときの反応です。これは業種というより客層と地域性で変わり、同じ業態でも真逆の結果が出ます。手間が省けて助かったと受け取られる場面と、雑に扱われたと受け取られる場面が、実際に両方存在します。

やっかいなのは、この三つが同じ方向を指すとは限らないことです。定型に落ちるが取りこぼしの重い店、定型に落ちないが客層は許容する店。どれを優先するかで結論が反転します。自店がどこに位置するかは、実際にかかってきている電話の中身と、そもそも電話がどこから発生しているかを突き合わせないと決められません。電話の入口としてマップがどう機能しているかを確かめるところからであれば、GoogleマップのURLを貼るだけの無料診断で要点をその場で確認できます。

導入して失敗するときの型

現場で起きている失敗は、機能不足よりも設計の置き場所に原因があります。

起きることなぜ導入前に見抜けないのか
AIが受けた内容が現場に届くまでに時間がかかる通知は届いているため、機能としては正常に見える
結局スタッフが折り返しており、工数が減っていない受電の記録は残るので、対応した件数としては成果に見える
常連が離れた離れた理由は誰も伝えてこないため、電話の変更と結びつかない
入れたあとも取りこぼしが続いている取れなかった電話の中身を導入前に把握していないため、比較ができない

四つ目が最も多く、そして最も損失が大きい型です。導入前の状態を測っていないので、良くなったのか変わっていないのかが判定できない。判定できないまま契約だけが続き、次の打ち手も決まりません。

もうひとつ、放置すると効いてくるのが三つ目です。常連客は不満を言わずに来なくなります。減った理由は記録に残らず、電話対応を変えた月と離反が見えるようになる月がずれるため、原因として疑われることすらありません。気づいたときには、その層はすでに別の店に定着しています。

電話そのものを減らすという選択肢

もうひとつの方向があります。かかってくる電話のうち、電話である必要のないものを減らす、という考え方です。

営業時間、駐車場の有無、予約の要否、支払い方法。これらの確認で鳴っている電話は、情報が検索面に出ていれば発生しません。実際、店舗に入る電話の一定割合は、マップやサイト上で解決できたはずの確認です。ここが埋まっていない状態でAI電話対応を入れると、AIが答えているのはそもそも鳴らせる必要のなかった電話ということになります。

ただし、これは「先に情報を整えてから導入を考える」という順番の話ではありません。両方を同時に進めるほうが結果は早い。情報を整えれば問い合わせの母数そのものが変わり、AI電話対応に求める役割も変わるからです。片方だけを動かして評価しようとすると、どちらの効果も測れなくなります。

この、検索面に何をどこまで出すかという設計が、判断のいちばん難しい部分です。当社FACTORがこの部分を引き受けるとき、見ているのは自店の情報の欠けだけではありません。同じ商圏の競合が、どの情報をどこまで出していて、その結果として問い合わせがどちらに流れているか。実際、マップ側の情報設計を組み直した店舗で電話数が385%まで伸びた例がありますが、そこで効いていたのは自店の中身よりも、並んだときにどちらが選ばれるかの差でした。この並びの情報は自社の管理画面には出てこないため、社内では組み立てにくい部分です。

よくある質問

AI電話対応を入れれば、電話番のスタッフは不要になりますか?
処理できるのは、あらかじめ想定された範囲の用件です。想定の外に出た通話は人に回るため、対応そのものがなくなるわけではありません。どの程度まで任せられるかは、その店にかかってくる電話が定型に落ちるかどうかで大きく変わります。自店の電話がどこまで定型かは、実際にかかってきている内容と、その電話がどこから発生しているかを確認しないと決まりません。
AIが出ると、お客様に嫌がられませんか?
反応は業種より客層と地域性で変わり、同じ業態でも真逆の結果が出ます。手間が省けて助かったと受け取られる場面と、雑に扱われたと受け取られる場面が実際に両方あります。とくに常連客は不満を言わずに離れるため、影響が数字に出るのは変更から遅れます。自店の客層がどちらに寄るかは、来店の経緯と普段の連絡手段を見ないと判断できません。
導入の効果はどう測ればいいですか?
導入後の受電件数だけを見ても、良くなったかどうかは判定できません。比較対象になるのは、導入前に取れていなかった電話の件数と、その中身だからです。ここを残していない状態で始めると、効果の有無を説明できないまま契約が続きます。何を測っておくべきかは、その店の電話がどこから発生しているかによって変わるため、入口の状態から確認することになります。
先にホームページやマップの情報を整えたほうがいいですか?
情報が出ていれば発生しなかった確認の電話は確かに存在します。ただし、どちらかを終えてからもう一方に進むという順番の話ではなく、同時に動かしたほうが結果は早く出ます。情報を整えると問い合わせの母数と質が変わり、電話対応に求める役割自体が変わるからです。自店の場合に何がどれだけ足りていないかは、検索面での実際の見え方を確認しないと決まりません。

まとめ

AI電話対応を入れるべきかどうかは、機能の比較では決まりません。決めているのは、その店にかかってくる電話がどういう性質を持っているかです。判断の材料は複数あり、しかも互いに逆を指すことがあります。どれを優先するかで結論が反転するため、材料を並べたところからが判断の始まりになります。そして最も損失が大きいのは、導入前の取りこぼしの中身を測らずに始めてしまい、良くなったのかどうかを判定できないまま契約だけが続く状態です。判断の前に、いま電話がどこから発生し、どこで落ちているのかを押さえておく必要があります。まずはその現状を確認してください。

NEXT ACTION

この記事の内容、貴店の場合はどうなっているか気になりませんか?

記事で挙げた観点が自店に当てはまるかは、実際の状態を見ないと判断できません。まず現状の把握から。

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F FACTOR編集部

MEO・LLMO・Web集客の支援実績 約50業界・100社超。AI×人の運用で「検索とAIに選ばれる」店舗づくりを支援しています。運営: FACTOR株式会社(東京都豊島区)