業種別ノウハウ

整体院・接骨院の集客|
広告表現の法的な線引きとマップ運用の要点

公開日: 2026.09.03執筆: FACTOR編集部

夕方の受付。施術を終えた常連の方が「先生のおかげで腰、すっかり治りました」と笑って帰っていく。うれしくなったスタッフが、その日のうちにGoogleビジネスプロフィールの投稿へ「腰痛が治ったと喜んでいただきました」と書き、ホームページの「お客様の声」にも同じ一文を載せる。悪意はどこにもありません。ところがこの一連の流れは、接骨院と整体院とで根拠になる法律が違い、さらに「誰の言葉として、どの媒体に出したか」で位置づけが変わります。整体院・接骨院の地域集客がややこしいのは、集客の巧拙より先にこの線引きを踏み外すと、積み上げた表示をまとめて作り直すことになるからです。

接骨院と整体院は、同じ広告ルールで考えていいのか

外からは似た商売に見えても、広告の根拠法は別です。ここを混ぜたまま集客の話を始めると、あとで全部やり直しになります。

接骨院・整骨院は柔道整復師の施術所で、根拠法は柔道整復師法。鍼灸院やあん摩マッサージ指圧の施術所はあはき法です。共通するのは広告が限定列挙である点。「書いてはいけない」を並べた禁止リスト方式ではなく、「書いてよい」と法令で決められた事項の外に出られない構造です。

柔道整復師法で挙がっているのは、施術者の氏名や住所、業務の種類、施術所の名称・電話番号・所在場所、施術日や施術時間、それに厚生労働大臣が指定する事項(ほねつぎ・接骨、医療保険療養費支給申請ができる旨、予約施術、休日夜間の施術、出張施術、駐車設備)といった範囲です。そして両法とも、施術者の技能・施術方法・経歴に関する事項の広告を明文で禁じています。集客で真っ先に書きたくなる要素が、まさにここに当たります。

一方、整体やカイロプラクティックは国家資格の枠外の民間療法で、両法の広告制限が直接かかる相手ではありません。ただしそれは「自由に書ける」ではなく、かかる法律が違うという意味です。景品表示法の優良誤認、健康増進法、薬機法は資格の有無で線が引かれるものではありません。

注意

同じ建物で接骨院と整体サロンを併設し、ビジネスプロフィールもホームページも1つにまとめている——このかたちが一番判断を難しくします。読み手には同じ一枚の画面で、どちらの規制を前提に読まれるかが曖昧になります。

医療広告ガイドラインを持ち込むと、どこがずれるか

医療広告ガイドラインは医療法に基づき、病院・診療所・助産所を対象に定められたものです。施術所は医療機関ではないため、直接の適用対象ではありません。根拠法が違えば参照すべき通知も所管も違うのですが、検索して出てくる解説はクリニック向けが多く、読み口が似ているぶん、そのまま接骨院に流用されがちです。

よく混同される点なぜ混同が起きるかどこで判断が割れるか
ホームページは広告か医科は2018年の医療法改正でウェブサイトが規制対象に含められた経緯が知られている施術所の広告は厚生労働省の検討会で議論が続いた領域で、医科と同じ整理が済んだとは言い切れない。どこまでを広告とみなすかの線が読み手によって割れる
体験談を載せてよいかガイドラインに体験談の禁止が明示されており、施術所にも同じ条文があると思われやすい施術所側は「限定列挙に入っていない」という別の理屈で問題になる。根拠が違えば線の引き方も変わる
要件を満たせば制限が外れるか医科には要件を満たすと広告可能事項の限定が解除される仕組みがある柔整法・あはき法に同じ仕組みはない。医科向けの前提で組んだ手順は土台から崩れるため、どこまで書けるかが同じ根拠では決まらない

逆方向のずれもあります。医科の基準を恐れるあまり、施術日・施術時間・予約施術・出張施術・駐車設備といった、指定事項に含まれる実務情報まで空欄にしてしまうパターンです。

「治った」という言葉は、誰が言えば表示になるのか

効能効果を断定する表現は、限定列挙の外にあります。書いてよい事項に入っていないうえ、実証できない効果をうたえば景品表示法の優良誤認という別の入口からも問題になります。損失に直結する部分なので、線の内側に入らないものを並べます。

そのうえで一番押さえたいのが「誰の言葉か」という論点です。施術者が自ら書けば当然その施術所の表示。では来院者がGoogleの口コミ欄に自発的に「治りました」と書いた場合はどうか。それは第三者の感想であって、施術所が発した広告表示とは別物です。

問題はその先にあります。その文面をホームページの「お客様の声」に転載する、スクリーンショットにして投稿する、返信で「腰痛が良くなって何よりです」と書き添える。この瞬間、第三者の感想は施術所自身の言葉として画面に残ります。サイト本文を何度も見直している施術所ほど、店舗名で表示される返信欄と過去の投稿が当時のまま残っています。

注意

効能表現を放置した場合、痛みは二段階で来ます。行政の窓口から指摘が入れば、サイト・マップ・チラシの表現を横断的に書き換えることになり、積み上げたページと投稿の評価がまとめて動きます。より長く残るのが二つ目で、「治る」と読んで来院した方との認識のずれが低評価の口コミになるパターン。文言は自分の判断で直せますが、他人の書いた口コミは消せず、マップにもAIの要約にも参照され続けます。

施術前後の写真と体験談は、なぜ扱いが割れるのか

ビフォーアフター写真と体験談は、最も効くと信じられていて、最も扱いが割れる素材です。医療広告ガイドラインでは体験談は禁止、術前術後の写真も詳細な説明を欠いた掲載が禁止と整理されています。施術所は別の法律の側ですが、限定列挙という構造から見れば、効能を印象づけるこれらの素材は列挙のどこにも見当たりません。

にもかかわらず、掲載している施術所も一切載せない施術所もあります。この差はその表示が「広告」に当たるかどうかの解釈から生まれます。広告性は、誘引の意図があるか、施術所や施術者が特定できるか、一般の人が認知できる状態か、といった観点で判断されます。看板や折込チラシは疑いようもなく広告です。では自院のホームページは。マップの投稿は。口コミ返信は。媒体が増えるほど、同じ写真でも位置づけが変わります。

割れているのは写真の可否ではなく、どの媒体に、誰の言葉として、どの粒度の説明を添えて置くかの組み合わせです。媒体ごとに事情も違うため、一律の正解がありません。

自院がどこまで踏み込めるかは、掲げている資格・施術の実態・使う媒体、そして同じ商圏の他院がどのラインで運用しているかを並べて見ないと決められません。現在の表示状態の確認からであれば、GoogleマップのURLを貼ると要点がその場で表示される無料診断が使えます。

保険施術と自費施術は、画面上でどう見えているか

柔道整復師の施術で療養費の支給対象になるのは、外傷性の負傷、すなわち骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷です。骨折と脱臼は、応急手当の場合を除いて医師の同意が必要とされています。慢性的な肩こりや疲労回復を目的とした施術は対象外です。あはき法側も、療養費は医師の同意書が前提で対象疾患の範囲が定められています。

広告として書ける事項に「医療保険療養費支給申請ができる旨」が指定されている点は前述のとおりですが、条件が付きます。脱臼または骨折の患部の施術に係る申請については、医師の同意が必要である旨を明示する場合に限る。「保険取扱」の四文字を大きく掲げている施術所ほど、この条件が抜けています。

画面上の失敗は、法令違反の手前にもあります。マップの説明文には「保険適用」とあるのに、サイトの料金ページでは自費メニューが主役になっている。自費の料金が下限だけの表記で、初検料や物療料を含めた総額が読めない。この状態で肩こりを主訴に来院した方が、窓口で「対象外です」と説明を受ける。説明が正しくても、来院者から見れば話が違う、になります。

どちらを前面に出すかで、集まる人の質が変わります。保険を前に出せば来院数は動きやすい代わりに対象外の主訴が混ざり、自費を前に出せば単価は守れる代わりに比較検討で候補から外れやすくなる。この判断は、商圏内の他院がどちらへ寄せているか、施術者の体制、自院がどの主訴で選ばれてきたかで逆転します。材料が互いに逆を指すこともあり、決め打ちできる話ではありません。

マップと自社サイトの情報設計は、どこで差がつくか

カテゴリの選び方が、拾えるクエリを決める

ビジネスプロフィールのメインカテゴリは、表示される検索クエリの入口を大きく左右します。接骨院、整体、鍼灸院、マッサージ店。それぞれ引き寄せる検索意図が異なり、資格と施術の実態に合っていることが前提です。実態に合うカテゴリが複数ある施術所こそ、どれをメインに据えるかで見え方が変わります。距離は動かせない条件ですが、関連性と視認性は設計で動かせる領域です。

直したつもりの文言が、まだ残っている場所

効能表現の見直しでほぼ必ず取りこぼされるのが、ホームページ以外の面です。プロフィールの説明文、サービス欄と商品欄、過去の投稿、口コミへの返信、写真に焼き込まれたキャプション。担当者が代わっていれば、いつ誰が書いたのかも分からない文章が残っています。

予約導線は、保険と自費で本当に一本でよいのか

初検の問診に時間が要る施術所と、リピーターの短時間施術が中心の施術所では、予約の設計が違います。保険の初検と自費の初回を同じ枠で受けている、マップの予約リンクがトップページに着地して予約ページを探させている、特別営業時間が更新されていない。こうした綻びは、法令の話とは無関係に、毎日ぶんの予約を静かに取りこぼします。

FACTORがこの領域の設計を引き受けるとき、見ているのは依頼元の管理画面の中ではありません。同一商圏で並ぶ他院がどのカテゴリを選び、どこまでの表現で掲載されているか。近隣の施術所が同じ時期に投稿や写真、口コミの動きをどう変えたか。この種の情報は自院のインサイトにも管理画面にも出ないため、社内の材料だけでは「自院の表現が浮いているのか、埋もれているのか」を判定できません。安全側の線と集客上の攻め手が交差する場所は、外側の並びを揃えて初めて決まります。

よくある質問

整体院は国家資格が要らないので、広告表現も自由に書けるのですか?
自由ではありません。柔道整復師法やあはき法の広告制限が直接かかる相手ではないというだけで、景品表示法の優良誤認、健康増進法、医薬品医療機器等法は資格の有無で線が引かれるものではありません。施術の内容が実質的に医業類似行為に踏み込んでいれば、さらに別の問題も生じます。自院の場合にどこまで書けるかは、掲げている資格と施術の実態、そして使っている媒体の組み合わせを見ないと決まりません。
来院者がGoogleの口コミに「治りました」と書いてくれました。削除を依頼すべきですか?
第三者が自発的に投稿した口コミは、施術所が発した広告表示とは別物です。Googleのポリシーに反していない限り、施術所側から削除を申し立てる筋合いのものでもありません。注意したいのはその先で、その文面をサイトに転載したり、返信で効能を追認したりすると、施術所自身の表示として扱われる余地が出ます。自院の場合にどこまでの引用や返信が安全かは、掲載先の媒体と現在の文面の書きぶりを見ないと決まりません。
医療広告ガイドラインの解説を参考にしてもよいですか?
考え方の参考にはなりますが、そのまま当てはめるのは避けたほうが無難です。同ガイドラインは医療法に基づき病院・診療所・助産所を対象に定められたもので、施術所の根拠法は柔道整復師法とあはき法です。要件を満たすと広告可能事項の限定が解除される仕組みが施術所側に用意されていない点も違います。自院の場合にどの根拠と通知を参照すべきかは、開設している施術所の種別と広告に使っている媒体を見ないと決まりません。
保険が使えることを、マップやホームページに書いてもよいですか?
柔道整復師法では、医療保険療養費支給申請ができる旨が広告できる事項として指定されています。ただし脱臼または骨折の患部の施術に係る申請については、医師の同意が必要である旨を明示することが条件です。加えて療養費の対象は外傷性の負傷に限られるため、対象外の主訴で来院した方との行き違いが起きやすい箇所でもあります。自院の場合にどこまで書くかは、実際の施術構成と、各媒体に今出ている表記の食い違いを見ないと決まりません。

まとめ

ここまで読んで、自院のどこが引っかかりそうか、見当はついたかもしれません。ただ、線引きの結論は施術所の種別・施術の実態・使っている媒体の組み合わせで動くため、記事の中で一律に決められる性質のものではありません。だからこそ、次にやることは対策の決定ではなく現状の確認です。ホームページ、Googleビジネスプロフィールの説明文とサービス欄、過去の投稿、口コミへの返信。この4つは別々の場所にあり、直した記憶があるのはたいていホームページで、残りは当時の文面のまま動いています。まずはそこに今どんな言葉が出ているかを洗い出してください。そのうえで、同じ商圏の他院がどの表現でどう並んでいるかと突き合わせる。自院の画面を見ているだけでは、どこまでが許容範囲でどこから浮いているのかは判断できません。

NEXT ACTION

この記事の内容、貴店の場合はどうなっているか気になりませんか?

記事で挙げた観点が自店に当てはまるかは、実際の状態を見ないと判断できません。まず現状の把握から。

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F FACTOR編集部

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