朝、店を開ける前にスマホでプロフィールを開く。通知が2件。開くと、どちらも星2。文面は短く、「普通でした」「思っていたのと違った」。怒っている様子はない。ただ、明らかに満足もしていない。先週も同じような星2が付いたばかりで、これで3件並んだ。星1なら削除の可否を考えるし、星3なら気にしない。星2は、どちらの対処にも収まらないところに置かれています。星2は平均点への効き方も、他の利用者への見え方も、星1とは違います。違いを知らずに星1と同じ対処をすると、悪化することがあります。この記事では、星2が「並ぶ」ときに何が起きているのかを、評価の構造から見ていきます。
星1ではなく星2を付ける人の心理
星1を付ける人は、多くの場合、明確な怒りを持っています。待たされた、態度が悪かった、頼んだものと違った。出来事がはっきりしていて、文章も長くなりがちです。
星2は違います。星2を付ける人は、店に落ち度があったと断言するほどの出来事はなかったが、期待には届かなかったという位置にいます。だから「普通」「期待外れ」「もう一度は行かないかな」という言葉が並びます。怒りではなく、失望です。失望は怒りより言語化されにくく、本人も何が不満だったのかを正確に説明できないことがあります。
この違いは対処に直結します。星1の多くは特定の出来事に紐づくので、事実関係を確認して返信できます。星2は出来事が曖昧なぶん、何に対して返せばいいのかが定まりません。ここで「ご期待に沿えず申し訳ございません」という定型で返すと、失望した相手にもう一度失望を与えます。
星2が「並ぶ」ときに起きている構造
星2が1件だけなら、相性の問題で片付けられます。ですが続けて並ぶとき、そこには構造があります。
失望は、来店前の期待と来店後の体験の差から生まれます。期待は、店が自分で出している情報だけでなく、他の口コミやポータルサイトの紹介文のような、店の手を離れた情報からも作られます。星2が並ぶ店では、期待を作っている情報と、実際の体験のあいだにずれが起きていることが多くあります。ずれは店が良く見せすぎている側に出ることもあれば、逆に伝えきれていない側に出ることもあり、どちらかで打ち手は逆を向きます。
やっかいなのは、このずれが店側には見えないことです。店は自分の店を知っているので、外に出した情報を「自分たちが知っている実物」に照らして読みます。初めて来る人は、情報だけを見て期待を組み立てます。同じ情報でも、読み方が違う。星2が並ぶのは、店に問題があるからというより、店が出している情報が、実物と違う期待を作っているからです。
ずれの場所は、星2の文面を読むだけでは特定できません。文面に書かれているのは失望の結果で、その期待がどの情報から作られたかは書かれていないからです。初めて来る人がどの並びの中で自店を見つけ、隣のどの店と比べて期待を組み立てたのか。その材料は店の外にあり、店の中にいる人が自店の情報を読み返しても、知っている実物の側から読んでしまうので見えてきません。
平均点への効き方と、他の利用者からの見え方
Googleの星評価は、全口コミの平均で表示されます。星1と星2では平均を下げる力が違うのは当然ですが、実務で効いてくるのは平均そのものより、他の利用者が口コミ一覧を開いたときの印象です。
星1が1件混ざっている店を見た利用者は、「たまたま運が悪かった人がいる」と読みます。文面が感情的であれば、なおさら割り引いて読みます。ところが星2が3件、4件と並ぶと、読み方が変わります。「怒っている人はいないが、満足している人も少ない店」という印象になります。この印象は、星1より打ち消しにくい。星1は例外として処理されますが、星2の連続は傾向として処理されるからです。
もう一つ、星2は「並び順」の影響を受けます。Googleの口コミ一覧は、初期表示で「関連性の高い順」に並び、新しさや文章量、他の利用者の反応などが関わるとされています。短い星2が並んでいても上位に出てこないこともあれば、逆にまとまった文章の星2が長く上位に留まることもあります。何が上位に残るかは店ごとに違うため、平均点だけを見て安心も心配もできません。
返信で状況が反転する場合、しない場合
星2への返信には、状況を反転させる返信と、かえって印象を固めてしまう返信があります。どちらになるかは、丁寧さや文章量では決まりません。同じ文面でも、星2の中身と、それを読む人が何を気にしているかの組み合わせで、効き方が逆を向きます。星2は怒りではなく失望なので、怒りへの返信と同じ構えで書くと、ずれたまま印象だけが残ります。
ただし、何を書けば反転するかは、星2の中身によって変わります。同じ「普通でした」でも、どの期待から生まれた失望かによって、返信で触れるべき点と触れてはいけない点が入れ替わります。ここに一律の正解はなく、1件ごとに、その口コミがどの期待から生まれたのかを判断してから書く必要があります。この判断が、星2への返信でいちばん難しいところです。
当社FACTORが口コミ返信を設計から引き受けるとき、見ているのは届いた口コミの文面だけではありません。地点や時点を変えたときに自店がどの店と並べて見られているか、同じ時期に周辺の店舗の評価がどう推移してきたかまで重ねたうえで、自店の返信の方向を決めています。その入れ替わりと推移は、自店の管理画面には一行も残りません。担当者の注意力の問題ではなく、店の内側からは記録の取りようが最初から無い材料です。
星2の口コミは、内容が事実と異なっていても、それだけでは削除の対象になりません。Googleが削除に応じるのは、スパムやなりすましのように、ポリシーに違反する場合に限られます。ほかにも判断の要る線があり、どの線に当たるかは文面と投稿の経緯で変わります。「期待外れだった」という評価は本人の体験であり、ポリシー違反にはあたりません。削除申請を繰り返しても状況は変わらず、時間だけが失われます。
AI検索に拾われるという新しい影響
ここ1年で加わった影響があります。AIによる検索の回答が、口コミの内容を要約して店を説明するようになったことです。「この店は雰囲気は良いが、量が少ないという声がある」といった具合に、口コミの傾向が一文に圧縮されます。
星2が並んでいる店では、この要約に「普通」「期待外れ」という語が入りやすくなります。星1の感情的な文面は要約で丸められることがありますが、星2の淡々とした失望は、そのまま傾向として要約に残ります。しかも要約には、店側の返信は反映されにくいとみられます。主に読まれるのは口コミの本文です。
つまり、返信で印象を整えても、AIの要約には効かない場面が出てきます。ここで効くのは、星2を生んでいる「期待のずれ」そのものを解消することです。ずれが解消されれば、新しく付く口コミの傾向が変わり、要約も変わります。逆に、ずれを残したまま返信だけを整えていると、AIの説明は変わらず、そこから来る人はまた同じ失望を抱えます。
自店がAIにどう説明されているかは、自分で検索しても正確には分かりません。検索履歴や位置情報の影響を受けるからです。地図上で自店がどう見えているかの要点なら、無料の診断でGoogleマップのURLを貼ると、その場で表示されます。
放置した場合に失うもの
星2は怒りを伴わないので、放置しやすい口コミです。削除できないことは分かっている、返信しても本人は戻ってこない、平均点も大きくは下がっていない。そう考えて後回しにする店は多い。
ですが、星2が並んでいる状態は、来店前の期待と実物のずれが直っていないという信号です。ずれが残っている限り、来店した人の一定の割合は同じ失望をして、同じ星2を書きます。星2は、放置すると増えます。そしてAIの要約に傾向として固定され、そこから来る人はあらかじめ下がった期待で来店するか、来店しなくなります。
失うのは、口コミを書いた数人の再来店ではありません。口コミを読んでから来るかどうかを決める、はるかに多い人たちの判断です。この損失は、売上の減り方が緩やかなので気づきにくく、気づいたときには口コミの傾向として定着しています。
星2が並んだときに問われるのは、その星2がどの期待から生まれたのかです。それは自店の情報と実物のずれを外から見ないと特定できません。
よくある質問
星2の口コミは削除できますか?
星2にはどう返信すればよいですか?
星2が続くのは、店の質に問題があるということですか?
まとめ
星2は、怒りではなく失望の評価です。出来事が曖昧なぶん対処が定まりにくく、並ぶと「満足している人が少ない店」という傾向として読まれます。その傾向はAIの要約にも残ります。星2が並ぶ店で起きているのは、店が外に出している情報と実物のあいだの、期待のずれです。返信で印象を和らげることはできても、ずれを残したままでは新しい星2が付き続けます。どの情報がどんな期待を作っているかは、店の中にいる人には見えにくいところです。外から見たときの出方は店の中からは再現できないので、商圏の並びを持っている側に出してもらうほうが早く、確実です。
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