全国の美容室の数は27万軒前後とされています。コンビニエンスストアの数倍です。この密度の中で、どの美容室も「新規のお客様を増やしたい」「リピートを上げたい」と考えていますが、この二つは同じ集客の話ではなく、打ち手も見るべき場所もまったく違います。それなのに、多くの店では一つの予算、一つの施策で両方を追いかけ、どちらも中途半端に終わります。「新規が来ない」と「リピートが続かない」を分けて考えたとき、何が見えてくるのか。美容室のオーナーからよく受ける質問に沿って整理します。
Q1. 新規が来ないのは、検索で見つかっていないから?
半分はそうで、半分は違います。「美容室 〇〇駅」で検索したとき、Googleマップの店舗一覧に自店が出ていなければ、確かに見つかっていません。ただ、一覧に出ているのに選ばれていない、という店も少なくありません。この場合、順位を上げることと並行して、一覧の中で隣に並んでいる店との比較で負けている部分にも手を入れる必要があります。
マップの一覧で利用者は、自店だけを見ているのではなく、同じ画面に並んだ数店を見比べています。同じ写真、同じ口コミでも、隣に何が並んでいるかで強みにも弱みにもなります。何が足りないかは、隣に誰が並ぶかで変わるということです。新規が動くのは、順位を上げることと、一覧の中で選ばれることを同時に積んだときです。
そして、この「隣の店と比べてどう見えているか」は、自店の管理画面には出てきません。見えるのは自店の数字だけで、比較は利用者の頭の中で起きています。
Q2. リピートが続かないのは、技術や接客の問題?
技術と接客が一定の水準にあることは前提ですが、リピートが続かない美容室では、そこ以外に原因があることが少なくありません。よく起きているのは、来店から次回来店までの間に、店と客の接点が途切れている状態です。施術を終えて満足して帰った客が、次にカットしようと思う一か月半後、二か月後に、自店の名前を思い出す仕組みがあるかどうか。
新規集客が「まだ知らない人に見つけてもらう」問題であるのに対して、リピートは「すでに知っている人に思い出してもらう」問題です。前者の主戦場は検索とマップ、後者の主戦場は店と客の間にある個別の接点です。片方の打ち手でもう片方を動かすのは難しく、同じ予算で両方を追うと、どちらにも届かない配分になりがちです。
リピートの構造でもうひとつ見落とされるのは、「来なくなった理由」が店には届かないことです。不満があって来なくなった客は、口コミを書くこともなく静かに離れます。店に見えるのは、予約台帳から名前が消えたという事実にとどまり、理由は店の外にあって、店の中の数字からは推測しかできません。
Q3. ポータルサイト経由の新規は、リピートにつながらない?
美容室の集客では、予約ポータルサイトの存在が大きく、新規客の多くがそこから来る店は珍しくありません。ポータル経由の客がリピートしにくいと言われるのは、その客がポータルのクーポンを軸に店を選んでおり、次回もまたポータルで別の店のクーポンを探すからです。ポータルが悪いのではなく、選ばれた理由がクーポンである限り、その理由はリピートの動機にならないという構造の話です。
一方で、ポータル経由で来た客が、Googleマップの口コミを読んで「この店はカットが得意らしい」と確認したうえで予約している場合、選ばれた理由はクーポンだけではありません。この客はリピートの動機を最初から持っています。同じ「ポータル経由の新規」でも、来店に至る経路の途中で自店の情報にどう触れたかで、その後の行動が分かれます。
差がつくのは、ポータルで見つけた客が次に確かめに行く場所で、クーポン以外の選ばれる理由が伝わるかどうかです。ただし、どの情報がリピート動機として働いているかは店ごとに違います。しかも同じ情報の効き方は、客がどの地点・どの時期に検索し、そのとき隣にどの店が並んでいたかで入れ替わり、その記録は店の側には残りません。
Q4. 新規とリピート、どちらから手を付けるべき?
この質問には「両方を同時に」と答えています。ただし同時にといっても、力の配分は店の状態で反転し、その状態は予約台帳だけでは判定できません。同じ数字に見える二店でも、配分の正解が逆を向くことがあります。
どちらに寄せるかを決める材料は複数あり、互いに逆を指すことがあります。そのうち店の中で分かるのは来店客の内訳くらいで、商圏の競合の動きをはじめ、残りは店の外にあります。配分を決める材料の大半が自店の外にあるため、この判断は店の中だけでは組み立てにくいものです。
自店がいまどちらに寄せるべき状態なのかは、実際の見え方と競合の並びを見ないと決められません。地図上で自店がどう見えているかの要点なら、無料の診断でGoogleマップのURLを貼ると、その場で表示されます。
Q5. 分けて考えないと、何が起きる?
新規とリピートを混ぜたまま集客を続ける美容室で起きるのは、「施策をやっているのに売上が動かない」という状態です。クーポンで新規を呼び、来た客にはリピートの仕組みがなく、また次のクーポンで新規を呼ぶ。集客の費用は毎月出ていくのに、客の数は積み上がらず、割引分だけ利益が薄くなります。
さらに、この状態は口コミにも表れます。クーポン目当ての新規客は口コミを書きにくく、書いても「安かった」が中心になります。すると、マップ上の口コミが「安さ」で埋まり、技術で選びたい客には選ばれにくくなる。新規の質が下がり、リピートも育たず、口コミがさらに新規の質を下げる。放置した美容室では、この循環が静かに進みます。気づいたときには、競合が技術と口コミで指名を集め、自店は割引でしか客を呼べない位置に置かれています。
FACTORが美容室の集客設計を引き受けるとき、見ているのは自店の予約数や口コミだけではありません。検索する地点や時点を変えたときに一覧の並びがどう入れ替わるか、同じ時期に商圏の競合がどう動いてきたかの推移まで重ねたうえで、自店がどちらに力を配分すべきかを決めています。この比較は自店の管理画面には一行も残りません。担当者の努力で補えるものではなく、店の内側には最初から記録の取りようが無い情報です。
Q6. なぜ自店では判別しにくいのか
新規とリピートを分けて考えるという発想そのものより、実際に判断を迷わせるのは、自店がいまどちらの問題を抱えているのかを見分けることです。予約台帳を見れば新規と再来の比率は分かりますが、新規が少ない原因も、リピートが少ない原因も、それぞれ複数あり、どれに当たるかで打ち手が逆を向きます。その見分けは台帳には書かれていません。
見分ける材料は、検索する地点や時点を変えたときに一覧の並びがどう入れ替わるか、同じ時期に商圏の競合がどう動いてきたかの推移にあります。いずれも一度見ただけでは形にならず、店の管理画面には一行も残りません。努力が足りないのではなく、判断に必要な材料が店に届いていない。その間にも、一覧で隣の店を選んだ新規と、思い出されずに離れた常連の分だけ、売上は削られていきます。
よくある質問
美容室の新規集客で、まず優先すべきなのはマップの順位ですか?
リピート率を上げるには、LINEやアプリを入れれば解決しますか?
ポータルサイトへの依存から抜けるにはどうすればいいですか?
まとめ
美容室の集客では、新規は「見つけてもらい、隣の店と比べて選ばれる」問題、リピートは「思い出してもらい、割引以外の理由で戻ってもらう」問題であり、打ち手も見る場所も分かれます。どちらに力を配分すべきかは店の状態で反転し、その判断に要る材料の大半は、地点や時点で入れ替わる並びや、同時期の競合の動きといった店の外にあります。外から見たときの出方は店の中からは再現できないので、商圏の並びを持っている側に出してもらうほうが早く、確実です。
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