業種別ノウハウ

不動産会社のポータル依存|
自社集客を並行させるときの設計

公開日: 2026.09.17執筆: FACTOR編集部

先に結論を書きます。ポータル依存が問題になるのは掲載費が高いからではなく、反響が出てくる経路が一本しかないと、条件の交渉ができなくなるからです。掲載を止めれば反響が消えるという状態では、値上げも掲載枠の改定も受けるしかありません。だから議論すべきなのは「ポータルをやめるかどうか」ではなく、二本目の経路をどう立てるかのほうです。とはいえ、これを始めた不動産会社の多くが途中で止まります。この記事では、その止まり方と、どこで判断が割れるのかを見ていきます。

「依存」という言葉が、問題の在り処をぼかしている

ポータル依存という言い方は広く使われていますが、この言葉だけだと何が問題なのかがはっきりしません。掲載費の総額が問題なのか、反響単価が問題なのか、それとも別の何かなのか。ここが曖昧なまま議論を始めると、たいてい「掲載枠を減らす」という結論に落ちて、反響が減ってまた戻す、という往復になります。

実際に効いているのは、金額そのものより交渉の位置です。反響の出どころが一本しかない会社は、掲載条件が変わったときに受けるしかありません。枠の値上げも、表示ルールの変更も、競合が同じ枠に増えることも、こちらからは動かせない。一本しかないことが、価格ではなく立場を決めています。

そして、この立場の問題は決算書には出てきません。掲載費という費目では見えるものの、「交渉ができない状態にいくら払っているか」という形では記録されないからです。だから社内では、毎年の掲載費の上昇を個別の値上げとして処理してしまい、構造として議論する機会が来ません。

放置したときに失われるのは、その年の利益だけではありません。二本目を立てるのには時間がかかるので、必要だと気づいた時点から着手しても、効き始めるのはかなり先になります。先延ばしのぶんだけ、交渉の位置が悪いまま過ごす期間が伸びます。そしてその間も、会社名で調べた人は何も出てこなければ同業に流れ、その反響は自社の記録に一件も残りません。

ポータルと自社集客は取り合いの関係にない

よくある誤解から潰しておきます。自社集客を始めると、ポータルからの反響が減るのではないか、という心配です。

実際には、探している人の動き方がそうなっていません。物件を探す人は、ポータルで候補を絞り、その後で会社名を検索して、どういう会社なのかを確かめてから連絡します。あるいは地域名で検索して、そこで初めて会社を知ることもあります。同じ人が両方を通る場面が多く、どちらか一方だけを使うわけではありません。

POINT

自社集客を整えると、ポータル経由の反響の成約率のほうが先に動くことがあります。ポータルで見つけた人が会社名を調べたときに、何も出てこない場合と、営業所の様子や取り扱いの傾向が分かる場合とでは、連絡するかどうかの分かれ方が変わるためです。この動きは、ポータル側のレポートには「反響数」としてしか現れません。

つまり、二本目を立てる作業は、一本目を細らせるのではなく、一本目の効率にも影響します。この関係を前提にしないまま「どちらに寄せるか」で議論すると、判断を誤ります。

自社経由の反響は、数ではなく出方が違う

自社集客を始めた会社が最初に戸惑うのが、反響の数がポータルと桁で違うことです。月に何十件も来ていたところに、数件しか来ない。この時点で「効果がない」と判断されることが、かなりあります。

ところが、来る反響の性質が同じではありません。ポータル経由は物件単位で、他社の似た物件と並んだ状態から連絡が来ます。自社経由は会社を見て連絡してくるので、問い合わせの時点ですでに比較の一部が終わっていることがあります。決めるまでの往復の回数も、条件の詰め方も変わってきます。

だから、両者を同じ「反響」として足し算で比べると、自社集客は常に負けて見えます。数だけを追っている限り、二本目が育っているのかどうかは見えてきません。かといって、では何を並べれば判断できるのかというと、ここは会社の扱う物件の種別や商圏の広さによって変わり、一律の答えがありません。

自社の反響が今どういう出方をしていて、外から見たときに会社がどう扱われているのかは、外から見た現状と合わせないと読み通せません。GoogleマップのURLを入力すれば、要点はその場で表示されます。

自社集客が立ち上がらないまま終わる会社で起きていること

ここが、この記事でいちばん書いておきたい部分です。自社集客に着手した不動産会社の多くが、途中で止まります。止まり方には、性質の違う二つの向きがあります。

ひとつは、反響が出る前に判断が下される側。もうひとつは、続けているが物件情報の複製に終始してしまう側です。前者は時間の問題、後者は中身の問題で、手の入れ方が逆を向きます。前者に対して中身を作り込んでも間に合いませんし、後者に対して期間を延ばしても、同じものが積み上がるだけです。

後者について補足すると、ポータルに載せている物件情報をそのまま自社サイトに並べても、外から見たときに自社が選ばれる理由にはなりにくい、という壁があります。同じ物件はたいてい他社も扱っているからです。ここで何を足すと差が出るのかは、商圏にどういう会社が並んでいるかによって変わります。周りの厚みによって、同じ方向の手入れが位置を動かす場面と、並ぶだけで終わる場面に分かれます。どちらの地域にいるのかは、並びを外から見ないと決まりません。何をすべきかが会社の中で決まらない理由は、答えが自社の外側の状況に依存しているからです。

そして、どちらの向きで止まっているのかを社内から判定するのは難しい作業です。反響が出ていないという症状は共通していて、社内に残るのは「まだ来ていない」という事実だけだからです。連絡しようとして途中でやめた人のことは、記録に現れません。

※この切り分けと、自社側に何をどこまで持たせるかの設計は、当社FACTORが引き受けている領域です。判断するとき見ているのは自社サイトだけではありません。同じ商圏の同業が検索面でどう並んでいるか、会社名で調べられたときに何が出てくるか、地点を変えたときに順序がどう入れ替わるかまで突き合わせて逆算しています。この比較材料は自社の管理画面には出てこないため、社内では組み立てにくい部分です。

踏むと戻せない線がある

自社集客を始めると、掲載する情報を自分たちで組み立てることになります。ポータル側で自動的に弾かれていたものが、自社サイトでは素通りするので、ここで線を越えることがあります。重いものだけ挙げておきます。

このほかにも、どこまでが正当な訴求でどこからが行き過ぎなのかを分ける線は複数あります。どの線に当たるかは、扱う物件の種別と、その地域で適用される規制によって変わり、一律では決まりません。反響を取りに行った表現が、既存の営業そのものを止める側に回ることがあります。

なぜ配分の判断が社内で決まらないのか

ここまでを整理すると、ポータルと自社集客の配分は、掲載費の金額だけでは決められません。二本目がどこまで育っているか、そして商圏に誰が並んでいるかに左右されるからです。

そして、その材料が社内に揃いません。社内の誰かが自分のパソコンで会社名を検索しても、それは実際に物件を探している人が見ている画面とは別物です。

もう少し具体的に書きます。判定に要るのは、こういう性質の観測です。地域名と物件種別を組み合わせた検索を、商圏内の離れた地点から引いたときに、自社がどこに出るか。会社名で調べられたときに何が並ぶか。同業のうちどこが検索面に手を入れていて、どこが入れていないか。そしてそれが数週間のあいだにどう動くか。どれも一度きりの観測では形になりません。複数の地点と複数の時点を並べて、初めて自社の位置が見えます。

会社の中にあるのは、反響件数と成約記録です。そこには同業の並びも、検索面での位置の推移も、連絡をやめた人の理由も残りません。担当者の力量の話ではなく、記録の取りようが最初から無いという違いです。だから社内で何度検討しても、材料が増えないまま同じ推測を繰り返すことになります。

掲載枠をどうするかを決める前に、まず外から見たときに自社がどう扱われているかを確認してください。同業の並びは自社の管理画面には出てこないので、そこだけは外から出してもらうほうが早く済みます。二本目がどの段階にいるのかが分かってから配分を考えれば、往復せずに進みます。

よくある質問

ポータルサイトの掲載を減らすと、反響は落ちますか?
短期的には落ちる可能性が高い、と考えておくのが安全です。自社集客は立ち上がるまでに時間がかかるため、先に減らすと空白ができます。移し方の設計は、二本目がどの段階にいるかと商圏の競合状況によって変わるため、自社の現状を確かめないと決められません。
自社サイトからの反響が月に数件しかありません。効果がないということでしょうか?
件数だけで比べると、ポータル経由とは桁が違うのが通常です。ただし自社経由は会社を見て連絡してくるため、問い合わせの時点で比較の一部が済んでいることがあり、決まり方が違います。数が少ないことと育っていないことは同じではありません。どちらの状態にいるかは、外から見たときの自社の出方と合わせないと分かりません。
物件情報を自社サイトにも載せれば、自社集客になりますか?
同じ物件は他社も扱っていることが多いため、複製だけでは選ばれる理由になりにくい面があります。何を足すと差が出るかは、商圏にどういう会社が並んでいるかによって変わります。周りの厚みによって、同じ方向の手入れの効き方が変わるため、周辺の並びを確認しないと決まりません。
どのくらいの期間で判断すればよいですか?
一律の期間は示せません。商圏の広さ、扱う物件の種別、同業がどこまで検索面に手を入れているかによって、動き始めるまでの時間が変わるためです。期間だけで区切ると、時間の問題で止まっている場合と中身の問題で止まっている場合を取り違えます。どちらなのかは、同業の並びまで確認しないと決められません。

まとめ

ポータル依存が重いのは掲載費の金額ではなく、反響の出どころが一本しかないと掲載条件の変更を受けるしかなくなるからです。だから論点は「やめるかどうか」ではなく、二本目をどう立てるかになります。両者は取り合いの関係にはなく、物件を探す人は候補を絞ったあとに会社名を調べるため、自社側を整えるとポータル経由の成約の出方も変わります。ただし自社経由の反響は件数で比べるとポータルに負けて見えるので、数だけを追っている限り育っているかどうかは見えてきません。着手した会社が止まる理由にも、反響が出る前に判断が下される向きと、物件情報の複製に終始する向きがあり、手の入れ方は逆を向きます。どちらで止まっているかは社内からは判定しにくく、連絡をやめた人の記録も残りません。掲載枠をどうするか決める前に、まず外から見たときに自社がどう扱われているかを確認してください。

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F FACTOR編集部

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