口コミ・レビュー

自動翻訳された口コミはどう読まれるか|
店主の画面とは違う言葉で並ぶ欄

公開日: 2026.10.29執筆: FACTOR編集部

夜、ホテルの部屋で台湾から来た旅行者がスマホを開き、近くのラーメン店を探しています。地図に並んだ一軒をタップすると、口コミ欄には日本語で書かれたはずの感想が、中国語の文章になって並んでいます。「少し待ちましたが、スープは丁寧でした」と書いた日本人客の控えめな一文も、訳されたあとの文で読まれます。同じころ店主は、管理画面で同じ口コミを日本語のまま読み、星の数と最近の件数を確かめています。同じ口コミ欄を、店主と旅行者は違う言葉の文章を先頭にして読んでいるわけです。この記事では、口コミが翻訳を通ってどう読まれているのか、そしてその訳がどの比較の中でどちらに効いているのかが、店の手元からなぜ見えにくいのかを整理します。

口コミは、読む人の言語に合わせて置き換わっている

Googleは2017年4月の公式ブログで、ローカルの口コミを、利用者が端末に設定している言語へ自動で翻訳して表示すると発表しました。対象はGoogleマップとGoogle検索で、利用者が何か操作しなくても訳文が表示され、多くの利用者には訳文の下に原文もあわせて示される、と説明されています。旅先で地元の言葉で書かれた口コミを読めるようにする、というのが発表の趣旨でした。

口コミのデータを外部のシステムで取り込む開発者のあいだでは、Google側から返ってくる口コミの本文に「(Translated by Google)」「(Original)」といった印が付き、訳文と原文が一緒に届く場合があるとも報告されています。公式の資料にこの形式の説明はなく、細かな挙動は利用の仕方で変わるようですが、少なくとも一つの口コミが、読む側の環境によって複数の文章として流通していることは確かです。

訳を通ると、言い回しの強弱はどう変わりうるのか

日本語の口コミには、不満を和らげて書く習慣があります。「少し待ちました」。日本語で読めば、全体としては満足している客が添えた一言だと伝わります。ところが機械翻訳を通ると、控えめな不満が強く、細やかな褒め言葉が平板に読まれることがあると考えられます。

どの言い回しがどちらに転ぶかは言語の組み合わせと文脈で変わり、店の側では訳文に手を入れることもできません。しかも、今の画面を一度見ても、その一画面からは、何が効いて印象や並びが動いたのかまでは分かりません。店が直接動かせない場所で、店の印象が組み替えられていることになります。

外国語の口コミは、日本語ではどう見えているのか

同じことは反対向きにも起きています。訪日客が英語や韓国語、中国語で書いた口コミは、日本語を設定した端末で開けば日本語に訳されて並びます。強い言い方がそのまま訳されると、日本語の読み手には実際の不満の度合い以上に厳しく響くおそれがあります。星の数は変わらなくても、口コミ欄をざっと眺めた地元の客が受け取る印象は、訳文の言葉選びに左右されます。

訪日客の多い店では、口コミ欄の一定の割合がこうした訳文で埋まっていきます。地元の客にとっては、それが「観光客向けの店」という読まれ方につながることもあれば、「海外からも選ばれる店」という読まれ方につながることもあります。どちらに傾くかは、訳文そのものより、周りに並ぶ店の口コミ欄との対比で決まる部分が大きいとみられます。

返信は、どの言語で読まれる前提で書くのか

店の返信も、口コミと同じ欄で読まれます。外国語の口コミに、どの言語で返すか。ここは、言語を合わせるだけでは足りず、誰に向けた返信として組み立てるかまでが問われる部分です。返信は、口コミを書いた本人だけでなく、その口コミ欄を開いて近くの店と見比べている人にも読まれ、その読み手は複数の言語にまたがります。訳された不満を読んだ人が、その不満を店側の言葉で読み終えられるか、不満を残したまま次の店へ移るかは、返信で変わりうる部分です。返信も、一つの言語で書けば、それ以外の言語の読み手には訳を通った文で届き、口コミと同じ強弱の入れ替わりが起こりうると考えられます。口コミについてGoogleは、多くの利用者に訳文の下に原文も示すと説明しています。同じ欄に並ぶ返信も、どの言語で書くかで、誰が店の言葉をそのまま読み、誰が訳を通して読むかが変わると考えられ、書く言語の選択そのものが判断の対象になります。そのうえで返信は、訳を通ったあとに近くの数軒とどう並んで読まれるかも前提に組み立てるもので、言語と書き方は語学だけでは決まりません。どの返し方が合うかは、型の良し悪しではなくその欄の読まれ方との組み合わせで決まります。

誰に向けて、どの言語で、何を書くかの組み立ては、その店の口コミ欄の読まれ方で店ごとに違ってきます。読み手の側では、言語によって並べて読む相手も違ってくるとみられ、同じ口コミへの返し方でも効き方が違ってきます。

旅行者は一軒ではなく、数軒を同じ言語で読み比べている

読む人の側の条件によって、比べられる相手は入れ替わります。店の画面に溜まるのは、自店の側の記録だけです。今の口コミ欄の並びと近くの店の読まれ方からおおよその当たりはつけられても、それを確かめるには変化を時間をおいて重ねていく必要があり、その変化は店の管理画面には残りません。

訳文そのものは、店の側で動かせません。動かせるのは、訳文と同じ欄に並ぶ店側の言葉、つまり返信です。口コミの訳文には手を入れられなくても、返信は、口コミ欄の中で店が自分の言葉を置ける唯一の文章です。読み比べている人は訳された不満のすぐ横でそれを読むため、返信は、比べている数軒の中に店が残るかどうかに関わってきます。

※冒頭の旅行者の画面で、店の口コミ欄と見比べられていたのは、近くの数軒の口コミ欄です。当社FACTORの多言語での口コミ返信は、その比べられ方を判断の材料に組み立てます。見ているのは、複数の店で返し方を変えた前後に、外から見える並びや反応がどう動いたかを重ねてきた記録で、そこから、訳を通ったあとの読まれ方も含めて今の自店の口コミ欄の比べられ方を見立てたうえで、返信の言語と書き方を店ごとに決めています。あわせて、訪日客が開くことがあるとみられるApple Mapsなど海外で使われる地図にも、店の情報を配信しています。

自店の口コミ欄が、訪日客の言語で近くの店と比べてどう読まれていそうか。そこを見立てるところまでは、個別の相談でお手伝いしています。無料のAI診断では、Googleマップの店舗ページのURLを入れると、いまのプロフィールの要点をその場で確かめられます。

読まれ方のずれを放っておくと、何が起きるか

訳された不満の横に、読まれ方に合った店側の言葉が置かれないまま放置された欄は、旅行者が比べている数軒の中で静かに外されていきます。旅行者は再訪の機会が少なく、一度候補から外れた店を思い出してもらう場面はほとんどありません。旅行の日程の中で一度きりだった比較で外れれば、その旅行者が滞在中にもう一度この店を候補に戻すことはまずなく、その一回の比較で、旅行者一人ぶんの売上の行き先が決まってしまいます。

地元の客の側でも同じことが起きます。訳された外国語の口コミが厳しく響いたまま並んでいれば、近所の人が初めて店を選ぶ場面で、その一文が判断を引っ張ります。そこで一度外されれば、その人が常連になるはずだった分の来店も、近くの店へ移ります。訪日客と地元客のどちらの読み手に対しても、ずれは店の目の届かない画面の上で、毎日の比較のたびに少しずつ効いていきます。

よくある質問

口コミの自動翻訳を、店の側で止めることはできますか?
Googleが公開している説明の範囲では、店の側で翻訳表示を止める設定は確認できません。翻訳は読む人の端末の言語設定に合わせて行われると説明されています。止められない前提で、自店の口コミ欄がどの言語の読み手にどう読まれているかは、入れ替わる比較相手と、返し方を変えた前後の動きを重ねて見ないと決まりません。
外国語の口コミには、その言語で返信したほうがよいですか?
その言語で返すかどうかは大事な判断ですが、それだけでは足りません。店の返信も、ほかの言語の読み手には訳を通った文で届き、口コミと同じずれが起こりうると考えられるためです。口コミを書く人の言語と、欄を開いて読み比べる人の言語は一致するとは限りません。誰に向けて、どの言語で、何を書くかの組み立ては店ごとに違い、自店の場合は、その欄が誰に、どの比較の中で読まれているかを見ないと決まりません。

まとめ

Googleマップの口コミは、2017年からの仕組みで、読む人の端末の言語に合わせて自動で訳されて表示されています。訳を通ると、言い回しの強弱が入れ替わって読まれるおそれがあります。返信をどう書くかは、その欄が誰に、どの比較の中で読まれているかで効き方が変わります。冒頭の旅行者がホテルの部屋で読んでいたのは、店主が今日も確かめているのと同じ口コミ欄でありながら、先頭に来ていたのは中国語の訳文で、ラーメン店を決めたのもその訳文を近くの数軒と読み比べた末のことです。

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F FACTOR編集部

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